00. プロローグ
それはまるでいつものように幕を開けたんだ。在り来たりかもしれない。でも、あたしは確かにあの時、冒険に憧れていた。ファンタジー世界へのね。それが実現するはずもないことは判っていた。だけど、あたしの本当にしてみたいことはそれしかなかったんだ。くたびれた毎日から開放してくれる何かを待ち望んでいたのかもしれない。待ってるだけじゃ、何も来てくれやしないのにね。だから、そんな望みなんて親になんか当然話せなくて、いっつも「まさきは将来のこと何も考えてない。ろくな大人になれないぞ」って言われてた。それが悔しくて絶え間なく反発してたけど、さ……大人の推奨する将来を見据えた生き方をするいとこが羨ましかったのもホントのことだったんだ。あたしには何もない。そのことが胸にぐっと迫るとただ立ち止まるしかなかった。表面は何でもないかのようないつものあたしだったけど、限界だった。がっこから帰ると、窓を開けて夕暮れの迫る空を泣きながら眺めていた。あたしの行くとこはどこなのか全然判らなかった。暗闇に差し込む一条の光すらもなくて、道に惑っていた。あれが町に来たその日まで。 |