12の精霊核

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-- overture(温かなときめき)

 小さい頃から知っていた。幼心に温かなときめきを置いていった精霊核の伝説。稀にも見ることのない色とりどりのクリスタルに憧れて、ホントに小さかった頃は「精霊核ハンターになる!」なんて雲を掴むような将来の夢をクラスのみんなの前で発表して笑われたっけな。「そんなのは協会が自分たちの都合のいいように作った絵空事なんだよ」って。「精霊核なんてホントはありはしないんだよ。空想だよ、空想。そもそも、エルフの森でドライアードを見たことある?」って。そう言われても、あたしは必死で信じてた。あたしの手の中にある水色のクリスタルの欠けら。堅いはずなのに柔らかくて、仄かな暖かさを感じさせる不思議な水晶みたいなもの。これは絶対に精霊核だってあたしは信じていた。
 この精霊核の伝説は正式には「十二の精霊核」として知られていて、歴史の教科書にもちょっとだけ触れられていた。確かこうだったと思う。「堕天使・ジングリッドが集めて傷つけてしまった精霊核を当時の枢機卿・レルシアと司祭・シェイラルのが封じ、天使長・久須那がリテール各地に運んだ」でも、伝説の真偽や目的なんて誰にも判らなかった。千五百年も昔の史料なんてほとんど残ってなくて、「十二の精霊核」については皆無。あたしはただ、この水色の欠けらが何なのか知りたくて、それがあたしの夢だった。ずっとずっと。
 って、言っても忘れてたんだけどね。この娘に会うまでは。漆黒の髪と瞳。何もかもがあたしと正反対。正直言って腹クソ悪い。でも、この娘と知り合えて良かったと思ってる。あたしの大切な友達・デュレ。キミがいなかったらここまでこれなかったよ……。


Virgo 10,1516 エルフの森でデュレの寝顔を眺めながら。セレス。