12の精霊核

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--. intermezzo 5(未来への道しるべ)

 その時のことはまだ、鮮明に覚えていた。暦的には二百二十四年も昔のことだけど、あたしにはたったさっきのことなんだけどね。デュレの泣き顔も、リボンちゃんのくたびれた姿も、迷夢の珍しく格好良かった戦いぶりも、肩を寄せ合ったサムと久須那のお互いの背中を守りあう戦い方も覚えているよ。でも、あれは本当にあったことなのか記憶に自信がないよ。夢や幻。むかし、何らかの力で滅ぼされたシメオンが見せた幻影、白昼夢だと言われても納得してしまいそうだった。
 だって、ここはこんなにも変わらないままなんだもの。シメオンの遺跡はウィズたちと出会った時と何も変わっていないんだもの。あたしたちがあの場所、あの時代に成してきたことの証拠は、きっとどこかに眠ってるんだろうけど、パッと見、何も見当たらないんだ。何だか、哀しいよね、歴史って。けど、あたしたちは間違いなく1292年から1516年に至るまでの道しるべを時の流れに刻みつけた。――ちょこっと考えたんだけど、あたしたちがあの時代に降り立った時にこの未来はほとんど決まっていたんだね。だから、あたしたちの歴史は惑うことなくこの時代まで流れ着いたんだと思う。でも、リボンちゃん、キミはあんな終わらせ方をホントに望んでいたの? 違うんだよね。違うはずだったんだよね……。
 きっと、あと一日以内にデュレが戻ってくる。そうしたら、もう一度、始まるんだね。
 これで、ホントに最後なんだよね。これで終わるんだよね。……もう、誰も死んだりしないよね……。母さん。イヤだよ。悪くない人たちが傷ついたり、死んだりしていくの見たくないよ。

Leo 24, 1516 瓦礫の山に成り果てたシメオン時計塔、壊れたガラスの文字盤の横にて