12の精霊核

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--. intermezzo 8(白と黒の向こう側)

 もしも、後世のヒトにこのことを尋ねられることがあったらなんて答えようかと、あたしは不意に考え出した。十二コの精霊核を巡った伝説は信じられない出来事、生きている伝説の渦中へとあたしたちを導いてしまったのだから。『歴史に埋もれた精霊核を探し出す』そんな軽い気持ちで遺跡の発掘をしようかなと思っただけなのに気が付いた時には、消された歴史を目の当たりにしていた。歴史に潜んだシェイラル一族の悲願と悲哀。戦いと戦いの歴史。マリスの望んだこと。迷夢の望んだこと。数々のすれ違い。温かく優しいひとひらの夢の欠けらと辛く哀しい思い出。信じていたものの裏切りと、愛するものとの永遠の別れ。あれが運命だというのなら、あたしはどうしたらよかったんだろう。あんなに長く感じた時の流れも、過ぎ去ってみれば、嵐のような二週間に全てが収まっていて、とても密度の濃い経験だった。
 このことをどう何も知らない人たちに伝えるべきなのか……。きっと、デュレは考えている。あの娘のことだから、サムにスカートを覗かれたことから、闇の精霊・シルトのことまで一字一句漏らさずにメモノートを作ったりするんだろうなぁ。それはそれとして、伝説の真相究明に魔法学園を巻き込んだからには何らかの報告をしなくちゃならない。真実の全てを表すのか、それとも、再び静かな歴史の彼方へと眠りにつかせるのか――。やっぱり、偶然か必然かあの時に居合わせたあたしたちの記憶の中だけに封じておくのがいいのかな……。『トゥエルブクリスタル』はトゥエルブクリスタルのままで、伝説という真実を伝える。
 あ〜あぁ。湿っぽくなっちゃって何かイヤだなぁ。

Leo 27, 1516 何だかよく判らないけれど、とにかく終わったらしい最初の夜。セレス。