12の精霊核

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--. intermezzo 1(叶わない夢だけど)

 今日がこっちでの最後の夜だと思うと言葉じゃ言い表せないような不思議な気持ちがした。最後の夜。そんなのはあちこちで体験してきたけれど、今回のは特別だった。時を越えるんだって。そんな叶いさえしない夢のようなことをリボンちゃんは平気でつらっと言ってのけた。でも、リボンちゃんが本気で言うのなら、それは夢じゃなくてホントにそうなのも知れない。
 そー言えば、ちっちゃかった頃、大失敗したら、その時に戻って、そこだけやり直せたらと何度、思っただろう。叶いっこない夢。そんな絵空事みたいな夢ばかり見てたな、あたし。それ、忘れちゃったの、いつだったかな――。……あはっ♪ 思い出せないや。……。そっか、夢かもしれなかったけど、叶うと信じて一生懸命に追っかけてたから楽しかったんだ。バカだな、あたし。今頃そんなことに気がつくなんてさ。
 けど、明日からは違うんだ。きっと、見つけてくる。父さんの残していった謎も、十二の精霊核の伝説も解き明かしてみせる。きっと、その全てに絡まっているのが二百二十四年前、シメオンでの出来事なんだね。どこでも出てくる“黒い翼の天使・マリス”その影の端っこだけでも掴めたらあたしたちの行く先が見える。そして、あたしも伝説になってやるんだっ! なぁ〜んてね。こればっかりはどうやっても叶わない夢物語のような気がするよ。あ〜ぁ。

Leo 25, 1516 クリルカの耳長亭。デュレと一緒の最後の夜。セレス。